死神が来た

2003年11月1日

今日は酸素マスクがはずれた。
というより無理にはずしてもらった。
かわりに鼻の穴にひっかけるタイプのチューブがついた。
それでも目の前(顔の上?)についているうっとおしいのが取れて、ずいぶん気持ちがかるくなったはず。

カツは納得がいかない様子。だましうちだぁーって顔。
でもな、ぜいたく言うたらあかんよ。

カツは早く体を動かしたいんやね。
寝返りもうてない自分がもどかしくて仕方ないねん。

「カツがサリーを抱きしめる」
ベッドの上半身を起こして、カツの右腕をサリーの背中にまわしてあげたら、ぎゅっと力を入れてきた。
すごいすごい!もう「手」ではなくて「腕」も動くね。
左もひじを上げようとする。本当にカツはすごい。

「携帯なら押せる」
あんなにメールをしてたからそう思ったんだ。
サリーの携帯を使ってみようとする。でもだめ。
ボタンが小さくて、文字がよく見えないねんな。
それがわかると悲しそうな顔。自分はこんなこともできないのか、とがっかりしてる。
「カツのこと、わかる工夫して。」
言いたいことが山ほどあるのに伝わらない。
思うように身体が動かない。
その苛立ちが痛いほどよくわかる。

今日はサリーの事も怒ってたもんね。
役立たずめ!っておこってる。

たくさんおこって良いよ。そのいらだたしさが、きっとバネになる。
サリーがいれば、不満はすべて解決されるって常態じゃカツは自分で何もしなくなる。

今日は向かいのベッドにジョージ川口が来たね。
カツと同じの脳内出血だって。
有名そうな人たちがたくさん来たね。

死は、すべての人間に平等におとずれるんやって
サリーは思った。有名人にも金持ちにも。
「死神がつれていくのは向いのベッド。カツじゃない。」
「有名なジャズ屋が死んで、無名のロッカーが生き残る」って書いた。
サリーもちょっとカツの嫌味がうつったかな。

他人のことはどうだっていい感じのカツ。
そりゃそうや。今は自分のことで精一杯。
何よりも声が出ないのが不安らしい。
声は出てるんだけど、言葉にならないのがもどかしいらしい。
口の形だけで「サリー」って言おうとしているのがわかる。
でも。「言葉」にならない。舌がうまく動かない。

あせらないで、あせらないで。
カツはまだ、やっと生命が安定したばかり。
ヒビ割れだらけのガラス細工やねん。
それにほんまにダメやったとしても
サリーがずっとおるからね。

いつも病院までいく道で
「カツの声を返してください。カツに歌をもどしてください。」
そう祈りながら歩いているよ。
相手は、神でも仏でも。医者でも何でも誰にでも。

だってな、in my lifeの歌詞のとおり。

今まで行ったいろんな場所。
今まであったいろんな人たち。
昔ながらの人も、いなくなった人も。
みんな私にとって大切な宝物だけど
それ以上に私はあなたが好き。
何よりも誰よりもあなたを愛してる。

結婚パーティで歌ったとおり。

I can’t live without you

カツがおらんと生きていけないんねん、サリー。




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