口から食べられる喜び



2004年1月9日

本日無事VF終了。
主治医の先生から、「3食経口摂取にしてもおそらくOK。」といっていただき、ようやく鼻の管とお別れする事ができました。

前回の検査の時は、ほんの少量の水分でさえ、まともに食道に運べないカツのノドの映像をまのあたりにし、辛かったですが、今回は素人目に見ても「しっかり動いてる」という安心感がありました。本当に心から感謝しています。

特に検査の前にわざわざSTの先生が持って来て下さった「検査心得」メモ、ものすごく効果があったと思います。
確かに緊張はしていたと思いますが、かなり冷静で落ち着いて飲み込んでいたと思います。

また、検査直前まで「でもなー食べさせてくれる人がなあー」と言ったカツに主治医の先生の一喝「郷に入れば郷に従え!」も効いたみたいです。主人は主治医の先生に対しては従順なんです。
(とても信頼しているし、やり手の実力者だといつも言ってますから)

検査が終わり、今後のことに関する主治医の先生の他の方々に対する指示の言葉も、内容はほとんど聞き取れなかったようですが、「うまくいったんだ」という事だけは、わかったみたいでした。

5階の病室に帰る道すがら「それで、これからどうなるの?」と聞くカツに
「もう鼻のチューブは入れなくて良いんだよ」と説明しました。
「カツさん、何時に入れれば良いんですか?」
「カツさん、そろそろはじめて良いですか?」無くなるんだよって。

良い事がおこっても、何々すぐには信じられない性格のカツですが、ベッドサイドにもどっても、
誰も経管の時間をつげる人が来ず
「本当だ、誰も時間になってもこないね」とやっと喜びを実感できたみたいです。

「もう誰も鼻の管、入れにはこないんだよ」と言って、ふたりで少し泣きました。
(主人はずっと泣く事も我慢していたんですよ。泣くと鼻がつまるから)

「お昼ごはんは、口から食べて下さいって。水分も薬も、口から飲んで下さいって。食堂には”カツさんの席”ができるんだって。良かったね。」
そう言って、ふたりで手を取り合って泣きました。

昼食も無難に終わり、カツは片手を握りこぶしにして
「よし!」と言いました。
「何だか、すごい力が湧いてきたよ。よし!って気がするんだよ。」
まだまだ先は長いけど、がんばる力が出てきたようです。

夕方看護婦さんに立ち会ってもらって、また立ち上がり練習をしました。
「よし!」って気持ちがあるうちに、やっておきたかったらしいです。
このところ課題にしているのは、おしりが床についた状態からの立ち上がり。足が固定されてさえいれば、立ち上がる脚力には問題は無さそうです。

また本人のたっての希望で「手摺りにつかまっての横歩き」もやらせていただきました。4歩、歩けました。
「たかが4歩、されど4歩!」
猜疑心のかたまりの様なカツも、さすがに今日は
「毎日毎日、少しずつだけど良くなってるんだよ。」という
私の言葉を信じられたみたいでした。

○人付き合いに関して。

体調が良くなってきたせいか、ようやく他の人々に対する気遣いが本来のカツらしさに戻ってきた気がしています。
昨日書いた「障害者に対しては批判的」という言葉とは矛盾するかもしれませんが、本来カツは思いやり深い人間です。
車に轢かれた猫の死骸をかわいそうだからと言ってわざわざ車道から歩道の角に運んだりする男です。

同室だった「Tさん」
(この方は、脊椎損傷で下半身不随でした。)
俺よりもうんと回復していて、いつも羨ましかった。
PT室でも、まるでオリンピック選手みたいな練習してた。
部屋でも、いつも励ましてくれた。(奥さんもいつも声かけてくれた)
それなのに結核で転院なんて。

Tさんの隔離された部屋の前まで何度もいきました。
奥さんがいらっしゃったら渡すんだ、と言っておせんべいの袋を握り締めて。

今日、ようやく渡せたと思ったら、Tさんは救急車で行ってしまいました。
でも、ふたりの目と目の会話はきっと通じ合っていた事と思います。

それからTさんのかわりに同室になった「Sくん」
(彼は、脳腫瘍の手術時に神経を傷つけてしまったらしく、右手がやや動く程度。
言葉も聞き取りにくかった。当時、弱冠16歳の高校生だった。)

「俺よりもうんと若いのに、あんな目にあってて気の毒で、何て声をかけて良いのかわからないよ。」

「同室なんだから、その都度、何か話せば良いんじゃない?本人だって別に今さらなぐさめの言葉のききたくないでしょ。」

それ以来Sくんの事は、とても気にかけている様です。

私以外の人間とは、話しもしたくないと言っていた主人が、実に細やかにSくんの日常に反応しています。

曰く
「昨夜は、おそくまでお母さんとオセロやってたみたいだよ。カーテン越しだったから、詳しくはわからなかったけど。週末ののんびりした時間に、オセロの対戦申し込んでみたいね。」

もちろん私はすぐにSくんに対戦を申し込みました。
Sくんからも「いいですよ。」と返事をもらいました。

食堂の席も、主人の希望で、Sくんの隣にしてもらいました。
多分、Sくんも悪い気分じゃなかった感じです。
(出来の悪い、不良の兄貴分って感じかな?)

年齢的には、おそらくSくんのご両親の方が近いとは思うのですが、精神的成熟度はSくんと同じくらいかも。
Sくんのお父さんとも、病院や、看護婦さんの悪口で盛り上がったりしています。
(ごめんなさいー!!病人のうっぷん晴らしと許して下さい!)

こういった環境が、カツの精神的な回復にもきっとつながると信じています。
このリハビリ病院に来れて、本当に良かったです。
皆様、ありがとうございます!!

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